300時間かけて図案を描き上げたら、それを生地に写す作業に入ります。
下から光を当てて、墨で写していきます。1ミリともずれることは許されません。生地とほんの少しでもずれれば、仕上げたときに柄が合わないからですね。ただし、紙と生地は、ピッタリくっつくわけでもないので、ただ写しても図案通りに合いません。
この緊張は、機械で織られている色打掛との違いとなります。
もちろん機械で織るものも、織る前の緻密な計算や機械を見ておく職人さんが必要です。
私たち手描きは、染めている間も、ずっと、その計算が続くのです。だからこそ、一筆一筆に想いを込めなければ、それは絵に出てしまうのです。
難しいのは、縫い口も柄が合うことです。
「柄が合うのは縁起が良い」、というのがお着物のルールです。
ときつかぜを主宰する一真工房は、お着物の合口合わせで日本一の技術を持っています。これだけの色数を合わせることは、純粋に難しいのですね。全部バラバラの状態で染めていますので。
縫い口の柄が合うことは、「縁がつながること」に繋がります。また、格の高さも決まります。
ときつかぜの打掛は、すべての合口が色が繋がる、縁起の良い打掛にしております。
下描きは、この道30年の職人さん、ちいちゃんが染めます。
「カチン描き」という、桃山時代からの技法、いわゆる墨線なのですが、日本一繊細なカチン描きを施していくのも、ときつかぜを主宰する一真工房の代名詞です。この繊細さが、素晴らしい美しさをもたらすとともに、この後の染をより一層困難にするのですが、それはまた次の機会にて。
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